シェアリングテクノロジー株式会社 代表取締役 篠昌義氏

会社名  : シェアリングテクノロジー株式会社
証券コード: 東証マザーズ 3989
代表者  : 代表取締役 共同経営者 篠 昌義、代表取締役 共同経営者 森吉 寬裕
略歴   : 1984年兵庫県生まれ。大阪大学大学院在学中に公認会計士試験にチャレンジ、2010年公認会計士試験に合格。同年に有限責任監査法人トーマツに入所。2016年8月に当社入社。2018年8月より当社取締役副社長に就任、2019年2月より現職。趣味はウォーキング、スノーボード。
所在地  : 愛知県名古屋市中村区名駅1-1-1 JPタワー名古屋19F
設立   : 2006年11月
事業   : 消費者と生活関連専門業者をマッチングするライフサービスマッチング事業をメインに展開
資本金  : 6億7,468万円
URL  : https://www.sharing-tech.jp

『暮らしのお困りごと』の課題解決がサービスの根幹

宮崎善輝氏(株式会社ウィルズ取締役:以下、宮崎):早速、創立から今までのお話をお聞かせ願えますか。

篠昌義氏(シェアリングテクノロジー株式会社代表取締役:以下、篠):私は2016年に入社しましたが、創立は2006年で創立者の引字が大学在学中に作った会社です。当時はWEB業界が盛り上がりを見せ、さらなる成長を期待されていた、そういう時代でした。そのような時に、当社もWEBサービスを立ち上げようといろいろ考えた末にECサイトを立ち上げました。

宮崎:現在とは異なり、ECサイトを立ち上げられたのですね?

篠:はい、始まりはECサイトです。紆余曲折があり、次に始めたのがインターネット光回線の取次に関する事業です。2009年当時、引越と合わせて光回線を契約する潮流が出始めていた時期です。光回線を引いたらNTTからキャッシュバックなどの特典が貰えるという時代です。引越仲介業者へ行き、光回線のサービスパンフレットをお客さまにお渡しいただき、そこから契約に結びつけることで、少しずつ売上と利益を作っていきました。

宮崎:ECサイトから光回線といろいろと紆余曲折されたのですね。

篠:この事業で数億円の売り上げがありました。この事業を通して学んだこととしては、『暮らしのお困りごと』に関する需要が結構あるという点です。引越には、マンションからマンションもありますし、一軒家に引っ越すのもありますし、家を建ててというのもありますが、住まいなど生活まわりで起こる『暮らしのお困りごと』に対する適切な情報提供を行っている良いWEBサイトが見当たらないのです。いち業者が作っている小さいサイトが散見されるのみで、質が高いと思えるWEBサイトが無いのです。従って、『暮らしのお困りごと』を抱えている全国のお客さまと専門業者を繋げ、『暮らしのお困りごと』を解決していただけるようなプラットフォームを提供したら、社会のニーズにこたえられるのではないかと考えました。また、私たちとしてもECサイトで培ったWEB集客のノウハウを活かすことが出来るので、この分野でチャレンジをもう一回していけないだろうかと考えたわけです。光回線の取り次ぎ事業で作った利益を使ってチャレンジしたのが2012年です。

宮崎:なるほど、光回線事業の経験値と利益から次の事業を育てていったのですね。

篠:はい。このプラットフォーム事業は、コールセンターの問い合わせが9割でして、光回線の取次ぎ事業で培ったコールセンターのノウハウが大いに活かせているわけです。ECサイトではWEB集客を、光回線ではコールセンターのノウハウを獲得し、それらを合体させた事業でさらに次の事業にチャレンジしているのです。

宮崎:なるほど、自社の強みをよく理解した戦略的な事業展開で、大変興味深いですね。

篠:そうです。私たちはただWEBサイトで集客するだけではなく、それをしっかりと成約まで結びつけるシステムを自分たちで構築しています。また、コールセンターの質を常に高めていますし、WEB制作のみにとどまらず、一気通貫でインフラを提供する会社である点が強みです。

宮崎:確かにそうですよね。時代のトレンドをとらえて事業化するその嗅覚の鋭さですね。一方、WEBサービスはWEBで完結するとすぐにコピーされる可能性があると思いますが、そこにリアル(オフライン)の力を組み合わせることによって、コピーされるリスクを低減できるものと思います。

篠:その通りです。また、コールセンターの質も向上しつつも、ITを活用したサービス向上も進めています。「Mover」という自社開発のシステムで、GPS機能やスケジュール情報を搭載し始めています。リアル(オフライン)とWEB(オンライン)の両方の質を高め続けているからこそ、WEBを制作するだけの会社では太刀打ちできないだろうと考えています。

宮崎:おもしろいですね。二匹目のドジョウを狙って、メディアを他の領域でも広げていこうという考え方もあるかと思いますが、それよりも利用者側の立場に立って、サービスの質を高め、機会損失を減らし、成約率を上げるという本質に集中しているのですね。

篠:横展開も少し手掛けていますが、基本的にはその根幹がしっかり確立出来てから初めて横展開が可能になるものと考えます。

宮崎:なるほど。そのコールセンターの強みという経験値があったが故に、そこの重要性が企業体として理解されており、さらにそこを強みにしていくべき、という考えですね。

篠:そうです。ユーザー目線で考えるべきです。問い合わせを受けてからの電話や、加盟店からのレスポンスのスピードが速ければ速いほど成約率が高まるというデータがあります。やはり、これを追求しないと駄目だと考えます。

精度を高めたマッチングシステム、質の高いコールセンター、過去データが競争優位性

宮崎:なるほど、納得です。次の話題としてお聞きしていいですか。現在戦っていらっしゃるWEBメディアのマーケットにおいて、事業を取り巻く環境、競合との関係性などに対する認識はどのようなものですか。

篠:私たちの事業が徐々に注目され初めていると思っています。海外投資家と話をしていると、アメリカのアンジーホームサービスを引き合いに出されることがあります。完璧に同じビジネスモデルではないですが、戦っている市場は同じ会社です。そこはインターネットで完結しているモデルも一部ありますが、やはりそこでもまだ電話で取り次ぎを行っています。それを日本市場に置き換えたときに、私たちのポジショニングは絶妙に良い立ち位置にあると考えています。サービスをインターネットで完結させようと考えがちですが、今かかえているユーザー層のITリテラシーレベルや『暮らしのお困りごと』という緊急性が高いものであるため、WEBよりも1本電話して解決したいというニーズが高いのです。さらに、競合他社が増えたとしても、質の高いコールセンターを自社で構築するのは困難です。先行している私たちに対抗するためには、膨大な費用が必要となります。従って、需要が拡大し、競合が増えたとしてもこの絶妙なポジショニングができているというのは、私たちの最大の強みです。今の事業を柔軟に変化させながら伸ばしていけば、今のところ敵はいないという感覚です。

宮崎:市場は広がり続ける。そこに対して先行ポジションを取っていると。かつ絶対的な資産の蓄積があると、それはコールセンターの強みであると。それを後から追っかけようと思うと、もうプレーヤーは増えども、そのレベルまで持ってくるならかなり至難の業だと。なので後ろを廃すことができると。

篠:コールセンターとマッチングシステムと、あと過去のデータの集約ですかね。当社は加盟店である専門業者さんを中心に加盟店3,700社抱えています。この3,700社の品質、信頼度などは一朝一夕では構築できません。また、その精度を高めていく作業を2012年から徐々に考えて作っているので、今から同様のことを行うのは難しいと思います。

宮崎:なるほど。その加盟店さんの優良なデータベース、磨き上がったリストがあるということも強みなのですね。

篠:その通りです。そして、目指すべき形としては、様々なジャンルを取り扱っているサイトであろうという認識をユーザーが持っていて、緊急性が高いニーズが出てきたときに自然とサイトに流入してきてくれる、というポジションを作りたいと思っています。ハウスクリーニングなど日常的なニーズで利用して頂き、緊急度が高いニーズが発生した際にも利用して頂く形が理想的です。当社としては広告費をある意味かけずに獲得できる顧客になるので大変魅力的です。実際に、ハウスクリーニングより緊急性が高いニーズの方が、利益率が高いです。

インフラ提供会社としてCtoCへの事業展開

宮崎:次に今後の事業展開についてお聞きしたく思います。

篠:サイトで集客して終わり、というWEBサイト運営会社ではなく、サイトで集客してからしっかりと成約まで、『暮らしのお困りごと』に対して完璧に対応するというところまでのインフラを提供する会社。つまり、WEBサイト運営会社ではなく、インフラ提供会社という目線で見て頂けるようになりたいと考えています。また、今私たちの市場は、基本的に軽作業からリフォームまでを対象としています。軽作業より簡単な内容に関して対応しているサービスはあまりないのですが、ここに挑戦していきたいと考えています。例えば電球交換は基本的にやっていないです。ほかの軽作業のついでに対応することもあるかもしれませんが、基本的には電球交換だけでは加盟店は受け付けていないです。そこで、加盟店ではない一般の人の力を活用する形であれば可能ではないかと考えています。例えばUber Eatsみたいな、一般の誰でも簡単に登録ができ、電球交換の依頼があった場合、加盟店である専門業者が行くわけにはいかないので、その一般の人、例えば登録した大学生が電球交換を500円でやる、というような仕組みです。これが、WEBやアプリ上で完結する、という姿を目指したいと思っています。ITリテラシーが高い人たちが高齢者になったときに、アプリを使いこなす高齢者が出てくると思うのです。アプリでお願いしたら、5分後に大学生がバイトで来て、ハウスクリーニング、次に電球交換、そしてコンビニで買い物をしてきてくれるというようなイメージです。働きたい人は沢山いるのです。大学生だけではなく、社会人でも夜は暇だからバイトをやろうかというような世界になってきたときに、私たちのビジネスモデルは無限大に広がると思います。

宮崎:確かに。革新的であり、マーケット規模は果てしないですね。

篠:ただのWEB会社ではなく、あくまでインフラの提供会社である、という形が理想です。

宮崎:なるほどね。インフラですね。現在は、企業が業者をまとめて、一般ユーザーを集客していくというビジネスモデルから、一般ユーザーから一般ユーザーへ直接サービス提供が行われるという動きはあらゆるジャンルで進んでいくと思います。もう3年以内にそうした変化が来るのではないでしょうか。

篠:そう、インフラの提供会社です。そして、その波は来ると思います。

宮崎:一般ユーザーが『暮らしのお困りごと』をWEBで検索して、3社に問合せを出して、1週間から2週間考えて選定し、施工日程を決めてやっとサービス提供される世界から、アプリで頼んで数分後に近所の大学生が来て対応してくれる世界。高齢者は特にうれしいと思います。

篠:その通りです。ご高齢の方も、子供や孫にそういったちょっとしたお願いをしているわけですが、実際には頼みづらいんですよね。それを500円や1,000円ぐらいの安価ですぐ誰かにお願いが出来るのはうれしいと思います。

名古屋発ベンチャーの立ち位置が優秀な人材を惹きつける

宮崎:これは市場がより広がっていきますね。さらにお聞きしますが、事業展開を自社の現在のリソースのみで延ばすのか、M&Aなども想定して進めていくのか、それによって戦略や人材要件も変わってくると思いますが、いかがでしょうか。

篠:基本的には自社で進めていけると思っています。人材に関しては全方位的に強化し続けています。私たちの事業を取り巻く環境は変化し続けていますので、柔軟性を持って取り組み、かつスピード感がある成長企業に身を置きたい人は常に大歓迎です。そして、年間約85万件のデータを常に蓄積し続けています。これを活用して新たな挑戦をしていく人材を求めています。個人情報プラス、コールセンターでいえば音声データが全部入っているので、そういうところに興味を持っていただける方が入ってきたらチャンスが沢山あります。

宮崎:なるほど、御社のキーワードである柔軟性というところ、これに自分がフィットするなと思うようなそんな人材だったらいろんな可能性があるというわけですね。さらに蓄積され続ける大量のデータをもとに新規事業に挑戦する人材ですね。それでは、新卒も採用されていく感じですね。

篠:新卒も今年40人ほど名古屋で採用しました。名古屋にはアルバイトを含めて従業員が400人以上います。私たちは名古屋発ベンチャーなのです。名古屋でそういうITでチャレンジングな事業を作っていくっていう話はまだまだ少ないと思います。それをメーカーはちょっと違うなっていう人はぜひ来てください、という感じ。実際そういう人たちがうちに集まりやすいですね。ベンチャーに行きたいが名古屋にはあまり無い、あるいは東京で頑張っていたのだけども実家が名古屋で帰らないと駄目だったとか。ご家族が名古屋に転勤になったから名古屋に来たみたいな人が多いですね。そして、女性比率は比較的高いですね。コールセンターはもちろん、マーケティング部門や管理部門でも女性は多いです。全体で見ると、6割ぐらい。珍しい会社です。

宮崎:働き方改革のお手本になるような感じですね。

篠:意識はしてないけど、結果として女性比率が高まっています。また、会社の雰囲気でいうと、その女性、男性というのを含めて、何に対しても寛容なのです。服装や髪色にもうるさくは言いません。

宮崎:本当に素晴らしいです。仕事において、本当に求めているところをしっかりしていれば、それ以外に関してはもうご自由にと、柔軟にということですね。非常に働きやすいですね。

篠:キャリア志向が強く猛烈に働く人もいれば、ワークライフバランスの方を重視したい人も許される雰囲気です。

宮崎:もう自由にやりたい人はやると。もうそのとおりのスタンスだと。

篠:当然それでやりたい人のほうが上には上がります。それはそうですけど、コールセンターと同じフロアに管理部門やマーケティング部門含めた全部署の従業員がいて、コールセンターもすぐ横に座っているのですが、本当にいろんな人たちがいる空間というのは特徴かなと思いますね。

宮崎:最後になりますが、本記事の読者でもある個人投資家の方々に対して一言をちょうだいいただければと思います。

篠:去年、日経新聞に掲載された内容ですが、当時取締役の平均年齢が一番若い会社として上場企業ランキング1位になりました。そこで読み取れることは何かというと、とにかく若い会社ですと。それとともに柔軟性がありスピーディーなチャレンジができる会社です。今後、チャレンジングなことが起きた時に、この会社おもしろいね、これならひょっとしたら長期的にすごい会社になるのではないか期待を持っていていただけると嬉しいです。私たちは、本当に柔軟性とスピードっていうのが一番の取り柄です。そして、事業としてのポジショニングはすごいおもろしいなっていうのが、手前味噌ですけど思っています。もう1つポイントでいうと、堅実といいますか「地味さ」です。『暮らしのお困りごと』、というと派手さはありませんが、絶対に需要はある。そこに対してスピードで勝負していく企業に共感、応援してもらえたらありがたいです。地味だけど地味な良さ、隠れた格好良さを感じとってくれるような方々が株主だったら大変ありがたいです。

宮崎:なるほど。その地味というのが、ぼくは反対に褒め言葉というか、戦略上の優位点だと思います。絶対的に需要がある領域でインフラを作る、かつ目立たず、競合がなかなか入ってこない、これはなかなかビジネスとしておいしいポジションを取れる、と感じます。それこそ長期保有して、じっくりと見ていくべき会社なのかなと思います。

篠:はい、ありがとうございます。

宮崎:本日は誠にありがとうございました。